【練習1】対比①

 【問題1】

 かつて私たちを規制したのは、国家思想とかイエの家父長かふちょう制度というような、はっきりと目に見える権力とか規制やモラルであったが、今私たちを支配しているのは、そのようなはっきりと目に見えるものではない。個人主義という美名の裏で、情報という「見えざる手」が大きな手を広げているのである。情報が電波に乗り、活字に現れ、それによって私たちは動かされている。そして、自分がどこまで動かされているのかすら、自分で確かめられないほどである。だとすると、現代ほど自分の主体性、価値観を築き上げるのに難しい時代はないのである。

                     (町田静夫「成熟できない若者たち」講談社)

【問1】この文章の内容として最も適切なものはどれか。

1.今は昔に比べて規制の少ない個人主義の社会であるから、主体性や自分の価値観を持つことは容易になっている。
2.今は権力やモラルに代わって情報に支配されるようになり、かえって主体性や独自の価値観を持ちにくくなった。
3.我々は、社会にあふれる情報に動かされずに、自分自身にとって本当に価値あるものを主体的に選ぶべきである。
4. 我々は、目にみえる権力や規制に支配されないように、自分の主体性や価値観をしっかりと築き上げるべきである。

【問題2】

 今はどうか知りませんが、旧ソ連では、絵描きであることが導かれたそうです。ただし、体制的でないといけませんが……。ともかく「あの人は芸術家だから」とか「あの人はバレリーナだから、配給より少しよけいに食べさせてやらないとかわいそうだ」ということがあったといいます。ニューヨークでも、アーチストのためのマンションというのがありました。職業はみんな平等なのに、アーチストと名のつく仕事についている人は優遇されて(注1)安く住むところが用意されているのだそうです。

 日本では、優遇どころか、たとえば義務教育の教科の中から、美術の時間は無くなるか、もしくは減らされています。国策として科学的発見を願う時代に、「美」などは迅速な(注2)ことのように思われ、直接コンピューターの教育を徹底すればより足るり、と考えられているようですが、わたしにはそう思えません。科学的にも、芸術的にも「美しいものを創造しよう」とする感性と執拗な努力が両輪となって、新しい境地を開くのです。

                                                                                                  (安野光雅『絵のある人生』岩波書店)
(注1)優遇する:ほかの人よりも良い待遇をする
(注2)迅速な:すぐに役には立たない

【問2】この文章で筆者が最も言いたいことは何か。

1. 外国と比べ、日本では芸術が軽視されているが、芸術に限らず何かを創造するためには「美」に対する感性を育てることが必要である。
2.日本の義務教育で美術の時間が減らされているのは、科学的な発見を重視し、コンピューターの教育が徹底されるようになったからである。
3.日本でも外国のように、絵描きやバレリーナを優遇し、アーチストに安く住むところを提供すべきである。
4. 外国と違って、日本では芸術は不要なものと思われがちだが、「美」は人の心を豊かにするために重要なものである。

 

【答え】

【問1】
2.日本の義務教育で美術の時間が減らされているのは、科学的な発見を重視し、コンピューターの教育が徹底されるようになったからである。

【問2】
1. 外国と比べ、日本では芸術が軽視されているが、芸術に限らず何かを創造するためには「美」に対する感性を育てることが必要である。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *