【練習9】出張表現①

 【問題1】問いに対する答えとして最もよいものを一つ選びなさい。

 日本では、人気の美術展びじゅつてんに行くと一番混んでいるのが、入り口の作家の略歴りゃくれきとか解説ボードの前です。入場者はまずここで作家の立派りっぱな略歴や作品のすばらしさという能書のうがき(注1)のシャワーをあびて、その通りありがたく鑑賞かんしょうするのです。そんな人が次に立ち止まるのは教科書に出ている名画めいがとかパンフレットに掲載けいさいされた作品の前で、見終わった後には話題の「〇〇展」を見てきましたという事実が残るだけです。これでは本当の鑑賞ではなく、単に決められた通りの観光コースを見学してきただけの旅行者と同じです。

 評価ひょうかさだまった作家、人気の作品というのは当然専門家が選んだものであり、その意味で価値かちのあるものには違いないのですが、それでは単なる追体験ついたいけんに過ぎません。自ら主体的しゅたいてきに鑑賞したいならば、まず入り口の略歴とか作品の解説を見る前に作品そのものを観てまわり、自分が好きな作品があったら解説を読み、最後に略歴などをみて理解を深めるという見方をしてみてはどうでしょうか。

(注1)能書き:薬などの効果を示したもの。ここでは、優れた点を並べた言葉

【問1】この文章で筆者が最も言いたいことは何か。

1. 美術展にある、作家の紹介や解説は役に立つもので、旅行の観光コースでただ見ていただけの絵が、より深く理解できる。
2. 美術展を主体的に見るために、まず作品を観てから、好きな作品の解説を読み、略歴を読むことをすすめる。
3. 美術展では、自分の感受性で気に入った作品を観るべきであり、作家の紹介や解説などは見る必要はない。
4. 美術展では、入り口の解説の前は混んでいるため、先に作品を観て、次に解説を読み、略歴で理解を深めるほうが効率的である。

【問題2】問いに対する答えとして最もよいものを一つ選びなさい。

 文章には音楽と同じようにリズムがあります。音楽があるテンポで演奏えんそうされなければ音楽として聞こえないように、読書もしかるべきスピードで読まないと知識として脳に入ってこないのです。ぼくは「速読そくどく(注1)ほう」という読書方法をあまり評価ひょうかしていません。

 速読とはたとえるなら、「ベートーベンの第五シンフォニーを五分で演奏してしまおう」ということに相当します。しかし、そんなことをすればどんなに素晴すばらしい楽曲がっきょくでも音楽として成立しません。

 文学もそれと同じこと。夏目漱石なつめそうせき(注2)の『ぼっちゃん』を十分程度でパッパッと読んでしまったら、脳の中で行われる情報処理じょうほうしょりとしては、浅いものにならざるをません。

(注1)速読そくどく:速いスピードで本を読むこと
(注1)夏目漱石なつめそうせき:明治時代の小説家

【問2】この文章で筆者が最も言いたいことは何か。

1. 読書と同様に、音楽は演奏えんそうが速いスピードで行われると、成立しない。
2. 速読では音楽と同様にリズムが重要で、スピードが遅すぎると頭に入らない。
3. 速読は、それにふさわしい音楽とともに行うのが、最も効果的である。
4. 速読は、音楽の演奏を普通より短時間で終わらせることと同じで、いいと思わない。

 

 

 

 

【答え】

【問1】
2. 美術展を主体的に見るために、まず作品を観てから、好きな作品の解説を読み、略歴を読むことをすすめる。

【問2】
4. 速読は、音楽の演奏を普通より短時間で終わらせることと同じで、いいと思わない。

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